コスメエンジェル開発ストーリー

この内容は、フレグランスジャーナル2019年2月号に掲載されたものです。

娘のために作った、コスメエンジェル

好きなことを仕事に

いまでこそパラレルキャリアも珍しくありませんが、リクルートを退社して独立した頃は、よく「あなたは何屋さんなの?」と聞かれたものです。リクルートでは、習い事と資格スクールの情報誌『ケイコとマナブ』の営業を担当し、多くの方との出会いがありました。ちょうど、料理やメイクなど自宅で教室(サロン)を開いている「サロネーゼ」がブームで、「好きなことができて楽しい」と口を揃える彼女たちは、人生を大いに楽しんでいるように見えました。

営業の仕事もやりがいはありましたが、それが好きなことで、楽しんでいるかと聞かれたら、うぅぅ…。私も何か始めなくちゃ! 飛びぬけた才能もなく、自信につながる経験も乏しい私でも、バイタリティだけは人一倍ありました。好きなことを仕事にしようと思い立ち、そのためには資格が必須とばかりに、仕事の合間に興味のある習い事に片っ端からチャレンジしました。

カラーコーディネーター、バリマッサージ、チャイルドエデュケーターなど、色々な資格を取り、さらに副業で結婚式の司会やケーブルTVのキャスターを務めたりして、自分は何でもできそうな気がしてきて、といって何が本当に向いているのかわからず、模索しているうちに、20代が過ぎました。

就職してすぐ母からもらった本の栞に、「人生は幸せ探しの旅」と記されていました。事あるたびにその言葉が浮かんできては、悔いのない人生を送りたい、今を精いっぱい生きようと思うのでした。幸せを探す場所はどこか遠くではなく、自分の内だと常々私は思っていました。そう、幸せは自分の内側から生まれてくるもの。眠っている能力や魅力が引き出されたとき、人は生きる喜びを感じ、未来に希望を託せるのではないか。そういう思いから、模索中の私がたどり着いたのが、イメージコンサルティング業でした。

 

畑違いに挑む

第一印象や見た目の大切さは誰もが知っていますが、表情やしぐさ、立ち居振る舞いに気を付けている人は、あまり多くありません。それらに意識を向ければ、ほんの少しの変化で魅力がぐっと増すことがあります。その道筋を作り、ステキなレディに導くことは、自分にぴったりの仕事に思えました。女性をターゲットにした「イメージコンサルティングサロン ユミ」をオープンしたのは、2008年8月のことです。

ところがフタを開けてみると、イメージコンサルティングは、実はビジネスマンにも需要がありました。企業研修の依頼が増え、ビジネスコンサルティング、マナー指導、営業研修、人材育成など業務は広がっていきました。その他、タレントやモデルの養成に携わったり、自分の惚れこんだアイテムの販売を手がけたり、ママアイドル「さくらマザー」のメンバーとしてCDデビューまで果たして西武ドームで歌って踊ったり、おかげで、あなたは何屋さん? 手広くやり過ぎじゃない? 業務をもっと絞り込んだほうがいいわよ、と進言されたりもしました。

でも私にすれば、人生を豊かにするため独立したのだから、感度の赴くまま進むことにためらいはなく、多くのご縁をいただき、いつのまにかジャンルが多岐に渡っていた、というだけのこと。何でも屋? いえマルチなんです、と皆様のご意見を拝聴しつつ、そのまま突き進み、2013年には株式会社由美プロとして法人化しました。

方針として仕事の内容に垣根を作らず、世の中で求められていると思えば、どんな事業も積極的に取り組むようにしましたが、その中でも最大の挑戦が、畑違いの化粧品開発でした。これまで培ってきた人脈だけを頼りに、そこまでして作りたかった化粧品は、当時小学5年生だった長女のためのスキンケア化粧品でした。

 

子供用スキンケア、第2弾も

多感な少女時代はルックスにコンプレックスを持つもので、私もそうでしたし、誰よりも深刻だと思っていました。だから、ニキビを気にする娘の気持ちは痛いほどわかりました。笑顔を見せることが少なくなり、持ち前の明るさが失われていくのを見て、何とかしてやりたいと思うのですが、スキンケアをするにも、子供が日常安心して使えそうな商品が見当たらないのです。

だったら自分で作るしかない! と娘への思いを胸に企画書を作成し、OEM専門の化粧品メーカーに持ち込んだところ、ニッチな分野でおもしろい!と賛同していただき、開発がスタートしました。娘も全面的に協力し、パッケージデザインには彼女のアイデアを取り入れ、一緒に工場や倉庫の見学にも行きました。

大人の目線ではなく、小中学生に気に入って使ってもらえるように、子供たちの意見を聞きながら改良を重ね、使い勝手のよさと肌への優しさを考慮して、容器にもこだわりました。こうしてほぼ1年がかりで、2017年の秋に完成したのが、小中学生向けスキンケア「コスメエンジェル」です。

発売時は、「価格が高すぎる」とか「小学生からコスメなんて!」とか、厳しいお言葉もいただきましたが、「肌がきれいになった」「自信がついた」といった子供たちからの嬉しい便りが励みになりました。3月には要望の多かったUVプロテクトクリーム(日やけ止め・保湿クリーム)を発売します。紫外線や大気汚染など、子供たちの肌は日々危険にさらされています。ぜひ男の子にも、この商品で肌を守ってもらいたいと思います。

現在、中学1年生になった長女は、同級生から肌がきれいとほめられるそうで、ニキビで悩んでいたのが嘘のようです。もちろん自分も開発に関わったスキンケアを勧め、着々と愛用者を増やしてくれています。爆発的にヒットする商品ではありませんが、必要とする人が少なからずいるし、よい商品は必ず認められると信じて、大事に育てていこうと思います。合言葉は、「10歳から始めよう、スキンケア!」

 

時代のニーズに応える

イメージコンサルティング業は、当初ターゲットとしていた女性だけでなく男性や若年層にも拡がりを見せて青山学院大学地球社会共生学部で講義を持つまでになりました。国際社会で大切な“共に生きる力、共生マインド”を学ぶこの学部では、社会に貢献できるビジネスパーソンを養成するため、人に好印象を与える様々なアプローチを教えており、100人を超える生徒が履修しています。これも時代の要請だと実感します。

自分のアンテナを信じ、時代のニーズを捉えながら、公私ともに人生を楽しむ、というのが常に心に描いている私自身の姿です。そこには意欲と笑顔があり、「〇歳までに〇〇する」と己に課す目標設定があり、出会いやご縁を大切にする気持ちがあります。両親、家族、友人、仕事仲間、多くの人の支えと応援があってこそ、今の私があると、肝に銘じています。

化粧品開発も、素人の発案をまわりのプロフェッショナルの方々の助けを借りて達成できたものです。力を合わせることの素晴らしさが、思春期を迎える娘にもきっと伝わったでしょうし、未知の分野に挑む母親の姿を見て、何か感じることがあったとすれば、それは商品作り以上に価値あることに違いありません。この先、娘はどんなことに興味を持ち、どんな未来が娘を待ち受けているのか、温かく見守っていきます。

私自身を振り返れば、いつも前向きに感謝を忘れずに過ごしてきたつもりです。40代になっても20代のバイタリティで、これからも、いただいたご縁を大切に今を精いっぱい生き、私の座右の銘、「キラキラ☆HAPPY」を実現していきます。どんな環境であっても、いくつになっても、輝ける私であり、その輝きで人のお役に立ちたい、そう願っています。つい最近のHAPPYは、娘が何気にくれたこの一言でした。

「ママって、毎日すごく楽しそう!」

 

福島 由美(ふくしま ゆみ)

株式会社由美プロ(東京都渋谷区)代表取締役。一般社団法人日本インプレッションマネジメント協会代表理事。青山学院大学地球社会共生学部非常勤講師。コスメコンシェルジュ。イメージコンサルティングを主体に、企業研修、講演、ビジネスマナ―指導、司会者派遣業などを手がける。2016年コスメ事業部を発足し、翌年より小中学生向けスキンケア化粧品「コスメエンジェル®」を販売。テレビ・ラジオ・雑誌などのメディア出演も多く、マルチに活動中。二児の母。